「バーチャルYouTuber」という概念が世に出てから、まだ5年と少しの時間しか経っていません。歌にダンス、イラストや小説の執筆、そのほか無数にある表現方法のなかでも、ひときわ新しい手法であると言っても間違いではないでしょう。それでも文化としてはほんの短いこの期間の中で、驚異的なスピードで人々に浸透していったのは、多様な形で需要を満たしてくれる存在だったからだと思います。
発信者としては、YouTuberのようなことをやってみたいけれど自分自身として活動することに抵抗がある方、自分好みの素敵な外見でキャラクターを演じたい方などに新たな選択肢を与えてくれました。視聴者としては、現実のアイドルよりも身近で、アニメキャラクターのようでありながらリアルに生きているという、既存の娯楽のいいとこ取りのような存在が誕生したとも言えます。それがポジティブな要因であるにせよ、ネガティブな要因であるにせよ、VTuberという存在がスポっとはまった方が多かったことが、今の勢いある市場を作りあげました。
結果としてVTuberは多様性を保ちながらもひとつのイメージとして定着し、それを取り巻く環境がいまだ試行錯誤している……というような印象を抱いている昨今です。ひとりひとりのVTuberとして生きている人たちが己のやりたいこと・目指すものに向けて活動しているのはこれまでもこれからも変わらないでしょう。急に大きくなったVTuberという存在に向けて、周囲がどう向き合っていくのか。そこから生じていく変化に、興味は尽きません。
そして広く知られるようになったVTuberを目指す人々も当然増え続けています。多くの人に知ってもらい、応援してもらうことを目的とするのであれば、ライバルは数えきれないほどいるのが現状です。自分の目指すことを達成するためには(どんな道でも同じではありますが)地道な活動の積み重ねや試行錯誤が必要になってきます。先輩ライバーの配信のどこに心動かされたかを分析したり、自分ならではの魅力はなにかを考えたり……。学校で学ぶという選択肢も、その行動のひとつでしょう。VTuberに何が求められるのかは今後も大きく変化していきますが、その中でもブレない土台となる能力を身につけることは、活動を始めるうえで決して無駄にはならないはずです。
新たにデビューする方、惜しまれながら引退する方、新たな道を切り拓く方など、業界は常に動き続けていきますが、新しくそこに加わる方が増えていくことは文化として間違いなくプラスになります。VTuberを応援するものとして、その意思を歓迎します。VTuberとして活動する経験は、当たり前ですがやらなかったら得られないものです。その経験が納得のいくものになること、そして誰かに憧れて選んだ道が別の誰かの憧れになることを願っております。