特別寄稿

VTuberの今までと
コレカラ

株式会社アプリスタイル VTuberスタイル編集部デスク
江川 幸人

1988年生まれ。株式会社KADOKAWAにて小説・雑誌の編集経験を積み、2020年より株式会社アプリスタイルにて雑誌「アプリスタイル」「オトメイトスタイル」ほか複数の雑誌・書籍の制作を担当。2021年8月にVTuber専門情報誌「VTuberスタイル」を立ち上げ。

※2021年8月31日に創刊された初の定期刊行VTuber専門情報誌。偶数月末日ごろ発売。VTuberに関連する内容ならなんでも取り扱うことをコンセプトに、数多くのVTuberや事務所の協力のもと、毎号充実&注目のトピックス盛りだくさんで絶賛刊行中!

VTuberスタイル

「バーチャルYouTuber」という概念が世に出てから、まだ5年と少しの時間しか経っていません。歌にダンス、イラストや小説の執筆、そのほか無数にある表現方法のなかでも、ひときわ新しい手法であると言っても間違いではないでしょう。それでも文化としてはほんの短いこの期間の中で、驚異的なスピードで人々に浸透していったのは、多様な形で需要を満たしてくれる存在だったからだと思います。

発信者としては、YouTuberのようなことをやってみたいけれど自分自身として活動することに抵抗がある方、自分好みの素敵な外見でキャラクターを演じたい方などに新たな選択肢を与えてくれました。視聴者としては、現実のアイドルよりも身近で、アニメキャラクターのようでありながらリアルに生きているという、既存の娯楽のいいとこ取りのような存在が誕生したとも言えます。それがポジティブな要因であるにせよ、ネガティブな要因であるにせよ、VTuberという存在がスポっとはまった方が多かったことが、今の勢いある市場を作りあげました。

結果としてVTuberは多様性を保ちながらもひとつのイメージとして定着し、それを取り巻く環境がいまだ試行錯誤している……というような印象を抱いている昨今です。ひとりひとりのVTuberとして生きている人たちが己のやりたいこと・目指すものに向けて活動しているのはこれまでもこれからも変わらないでしょう。急に大きくなったVTuberという存在に向けて、周囲がどう向き合っていくのか。そこから生じていく変化に、興味は尽きません。

そして広く知られるようになったVTuberを目指す人々も当然増え続けています。多くの人に知ってもらい、応援してもらうことを目的とするのであれば、ライバルは数えきれないほどいるのが現状です。自分の目指すことを達成するためには(どんな道でも同じではありますが)地道な活動の積み重ねや試行錯誤が必要になってきます。先輩ライバーの配信のどこに心動かされたかを分析したり、自分ならではの魅力はなにかを考えたり……。学校で学ぶという選択肢も、その行動のひとつでしょう。VTuberに何が求められるのかは今後も大きく変化していきますが、その中でもブレない土台となる能力を身につけることは、活動を始めるうえで決して無駄にはならないはずです。

新たにデビューする方、惜しまれながら引退する方、新たな道を切り拓く方など、業界は常に動き続けていきますが、新しくそこに加わる方が増えていくことは文化として間違いなくプラスになります。VTuberを応援するものとして、その意思を歓迎します。VTuberとして活動する経験は、当たり前ですがやらなかったら得られないものです。その経験が納得のいくものになること、そして誰かに憧れて選んだ道が別の誰かの憧れになることを願っております。

バーチャルシンガーの
トレンド解説

飯寄 雄麻

87年生まれ、静岡出身。
広告代理店を経てLoftworkや2.5Dにディレクターとして参加。その後プロデューサーとしてデザインコンサルティングファーム・THINKRに所属し、2018年独立。
2019年、クリエイティブをカルチャーに育てるデザインパートナーとして、クリエイティブユニオン・CAMBR(キャンバー)を設立。
バーチャルシンガー・花譜(かふ)をはじめ、andropとCreepy Nutsがコラボレーションしたオンライン配信など、幅広いジャンルのライブ映像を手掛ける。
自身もカルチャーを発信するプロジェクトを多数主宰。インタラクティブな映像体験を追求し、VRやARなどのxR領域でのテクノロジーなど多岐に渡る分野でコンテンツ制作に携わっている。

キズナアイを筆頭に、バーチャルカルチャーが爆発的に広がりをみせた2018年。それから早くも4年以上の月日が経ち、VTuberという存在は一つのジャンルとして確立してきたように思えます。
黎明期にはタレント活動のような形が多かったVTuberも、今ではバーチャルシンガーとして活動を続ける花譜により、アーティストとして表現の幅も広げることができる存在として知れ渡りつつあります。

弊社CAMBRでは、そんな花譜をはじめとする様々なバーチャルアーティストの配信を担当しており、リアルやバーチャルを問わない数多くのライブ映像を制作しています。

案件を通じ、そういった最前線で活躍される方を目の当たりにすると、既に「バーチャルだから世の中から注目される」という時代は終わりを迎え、「アバターを用いた一つの表現方法」へ変わりつつあることがうかがえます。 これまで初音ミクなどのボーカロイド、アイドル、声優といった文化は、日本独自の表現方法で世界へ広がっていきました。

その代表例として、大ヒットアニメ「鬼滅の刃」、PerfumeやBABYMETALといったアイドルの活躍は皆さんもよくご存知かと思います。

社会現象にまでなった米津玄師さんはハチという名義でボカロPを始めたことがきっかけであり、そんなボカロ楽曲の歌い手として活躍していたまふまふさんは2021年の紅白出場を果たします。

上記からもわかるように、どのような形で才能が見出され、世界へと広まっていくか予想がつかないのが日本独自のカルチャーだといえます。

ボカロPになれば売れる、アイドルになれば注目される、声優になれば仕事に就ける、というわけではないことが当たり前のように、一人の表現者として何を伝えていきたいかを明確にしないとバーチャルアーティストも成功の道は切り開けません。

バーチャル・パフォーマーコースでは、VTuberやバーチャルシンガーになることをゴールとせず、バーチャルアバターを武器に普通のアーティストよりもさらなる強みを導き出せるクリエイティビティはなにか、ということを探求できるカリキュラムで、学生の皆さんをサポートしていただきたいと思っています。

また、バーチャルシーンでは必然的にUnityやBlenderといったゲームエンジンや3Dソフトなどの最先端技術の理解も深めないといけません。

これら最先端の技術は、学ぶという意識より、音楽や映像・ゲーム・VRといったエンターテイメントの一部として捉えることで、様々な分野への興味を広げるきっかけにもなることが特徴ともいえます。
入学する皆さんも、バーチャルシーンで何を表現していきたいかを追い求め、一つの分野に盲目的になりすぎず、幅広く興味を広げていただければと思います。

そう遠くない未来、バーチャルアバターにより見出された才能たちと、一緒に世界を驚かせることを楽しみにしています。

オタクカルチャーとVTuberのこれから

中山 淳雄

1988年生まれ。株式会社KADOKAWAにて小説・雑誌の編集経験を積み、2020年より株式会社アプリスタイルにて雑誌「アプリスタイル」「オトメイトスタイル」ほか複数の雑誌・書籍の制作を担当。2021年8月にVTuber専門情報誌「VTuberスタイル」を立ち上げ。

推しエコノミー

オタク経済圏創世記

今は動画全盛時代です。YouTuber/VTuberは15年前からありますが、きちんと事務所ができたり、産業としてきちんと計測されるようになったのはここ5年ほどです。「YouTube広告なんて儲からないよ」「もうレッドオーシャン」「いまさら参加しても難しい」-こういった言葉を私自身今まで何度聞いてきたことでしょうか。トレンドだけみれば確かにそれが正しい、というのは分かります。でもそれでも私自身が10年以上このエンタメ業界に“ハマって”いるのは、常にこうした想定を覆すような「とんでもない作品」がどんなに成熟した業界にも生まれるからです。

2021年11月ニューヨークのアニメNYCにて「がうるぐら」コスプレーヤー達

日テレとNHKによってテレビ放送がはじまったのが1953年、その後10年以上「(ラジオや映画に比べて)テレビは金にならない」とずっと卑下されてきました。映画俳優は「テレビ落ち」を嫌って、誰も出演したがらない。そうした中で“最初の芸能事務所”であるナベプロがフジテレビで「ザ・ヒットパレード」の30分の歌番組を(制作費もほとんど出せないので)自腹で作ったのが1959年。その英断のお陰で芸能事務所は60-70年代に音楽番組にタレントを送り込む権利を獲得し、80年代のCD時代に急激に巨大化していきます。ジャニーズもアミューズも、ナベプロからこの手法を学びました。

2021年11月ニューヨークのアニメNYCにてホロライブVTuberパネルを心待ちにする2000人超のファン(会場に入りきれなかった)

携帯ゲームは1998年のNTTドコモのiモードが始まりで、そこから10年間は「5千億以上の家庭用ゲームで出来上がったゲームを、小さな画面に移植するだけ」の数百億円の小さな市場でした。ところがDeNAやGREEがゲームSNSを立ち上げ、『釣り☆スタ』や『怪盗ロワイヤル』が1作品で100億円以上稼ぐような巨大化をしたのは10年たってからの話。その後は主戦場がスマホに移り、20年たった今でも『FGO』や『ウマ娘』のような大作は生まれ続けています。 トレンドの見極めはもちろん大事です。10年に一度、今ここしかないというタイミングは確かにあります。ただそれ以上に、「市場の成熟」「レッドオーシャン」議論は9割以上の確率で間違っています。ほとんどのケースが、実はまだまだ黎明期・成長期だったことが多く、それをクリエイターが覆してきました。クリエイターは一般的に言うような「優秀さ」とはかけ離れた人も多いです。論理的に説明がつくような市場タイミングや商品差別化といった記号的なものをすべてちゃぶ台返しするような作品も作ります。会議室で過半数が賛同するような商品で大ヒットしたものを私は見たことがありません。知りうる限りは、7-8割が反対するような難点があったり、先行事例がなさすぎたりするなかで、たった1人の妄想と野心によってつねに市場の予想を裏切るものが、予想外のヒットを生み出してきました。

2019年7月Anime Expoにて

日本はクリエイター大国です。驚かれるかもしれませんが、超優秀と言われるシンガポールや中国・韓国の教育システムよりも、また自由度が高い米国のリベラル型教育システムよりも、同質性が高い反面、わりと“ゆるさ”があって学校から距離をおく生徒すら許容する日本は相対的に多くのクリエイターが生まれ続けてきました。作家、漫画家、アニメーター、映画監督、ゲームデザイナー、YouTuber、アーティスト。

日本は起業家こそ決して多くないですが、人口あたりのクリエイター比率は非常に高い「創造先進国」なのです。ぼちぼちの基礎教育を学校でみにつけながら、エログロバイオレンスまで含めた表現の多様性・寛容性の高い日本は、個人個人のクリエイターにはとっても生きやすい国です。そんな中で、皆さんには大胆不敵に、市場トレンドや技術は“ぼちぼち参考に”しながら、最初から海外を目指して妄想と野心あふれる作品を作り続けてほしいなと思います。

「初音ミク」と創作の連鎖、そして未来。

クリプトン・フューチャー・メディア株式会社
講師 小泉 聖道

1987年生まれ。北海道札幌市出身。2008年にクリプトン・フューチャー・メディア株式会社入社。TOONTRACK、AUDIONAMIX、XFER RECORDS、BEST SERVICE、BIG FISH AUDIO、SPITFIRE AUDIOを始めとしたブランドの国内展開や、世界最大級の「音」に関するダウンロードストアSONICWIRE.COMサイトシステムのディレクション、アーティストリレーションなど、全般を担当。2019年11月からSONICWIREチームのチームマネージャーを務める。

Art by KEI © Crypton Future Media, INC. www.piapro.net

当社クリプトン・フューチャー・メディアは、「メタクリエイター」というミッションを掲げています。「メタクリエイター」は、あらゆるクリエイターの活動を便利にしたりサポートするために色々な仕組みやサービスを作ったりする、クリエイターのためのクリエイターという意味です。 このミッションのもと、作曲家のために音楽ソフトウェアやプラグインを輸入販売したり、音楽制作のノウハウを提供したり、また、クリエイターさんがマネタイズするための方法や、世界中に自分の作品を配信する方法、クリエイター同士が連携して創作を行う場など、様々なサービスや製品をクリエイトしてきました。 「初音ミク」はもともとパソコン上で人間の歌唱を再現するPCソフトウェアで、実際にボーカルを呼ばなくてもボーカルのトラックが作れてしまうような、クリエイターのための製品でもありました。リリースされた2007年は、YouTubeやニコニコ動画が始まったのとほとんど同時期ということもあって、興味を持った皆さんが「初音ミク」自身をボーカルとして起用し、次々に楽曲や動画を制作してアップしていきました。 当時はSNSなど連携の場がまだ活発でなかったので、クリエイターの皆さんが音楽や歌詞、イラストを自由に投稿して、さらにその作品同士でコラボができるような場所として、同年12月に「Piapro」をオープンしました。「Piapro」は無料で利用可能としました。さらに、PCL(ピアプロ・キャラクター・ライセンス)といって、「初音ミク」の二次創作物をネットに投稿しやすくなるようなルールも定めました。そうやって創作の輪はクリエイターの皆さんの活動によってだんだんと広がり、今日に至ります。

昨今ではSNSでクリエイター同士の連携も容易になるなど、世の中は大きく変わりました。当時、つまり皆さんが生まれたころには、YouTuberやインフルエンサーは職業として認知されていませんでした。時代は刻一刻と変化していきます。

CGM型コンテンツ投稿サイト「piapro」

「初音ミク」が描かれるネットの世界も同じです。例えばメタバースのライブでは、これまでの重力や光/影といった概念を無視し、ワイヤーなしで飛び回ったり、ライブ会場で人体への影響を気にせずレーザーを放射することも可能でしょう。これまでの常識にとらわれない表現による未来が待っています。変化はあらゆるジャンルで起こり続け、これに対応し続けることが求められます。 バーチャルパフォーマーコースでは、変化に対応するために必要なスキル、反対に変化しない過去や歴史といった情報も含めて、多くのことを学ぶ機会があると思います。皆さんがその過程を経て「中の人」のスピリットを習得され、スペシャリストとして活躍される未来を楽しみにしています。

ボカロPと
ニコニコ動画

一般社団法人 日本ネットクリエイター協会(JNCA)専務理事
仁平 淳宏

ネットで活躍する様々な分野のクリエイターを支援することを目的で、株式会社ドワンゴ、株式会社アニメイト、株式会社エクシング、株式会社KADOKAWA、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社からの寄付金を元に作られた団体で、クリエイターに有利な国民健康保険組合のあっせんなどの生活サポートや、権利の管理と展開、創作サポートを実施しています。
https://jnca.or.jp/

ネット時代のボカロP 秘伝の書

ネット時代のクリエーターやミュージシャンが得する権利や著作権の本

ボカロPってどんなことをする人でしょうか? 「初音ミクなどのボーカロイドソフトを使って音楽を作る人でしょ」と答えた人は、100点満点で、そうですね10点ぐらいかな。「自分で作詞作曲をして音源も作る人ですよね」と答えた人でも、まだ30点。

ボカロPとは「作詞作曲をする」「音源を作る」「作品を自分でプロモーションする」「同人CDなどの商品も自分で作る」「自分の作品の権利をきちんと管理して、それを世界に向けて発信していく」・・。つまり「作詞作曲家」であり「レコード会社」であり「芸能プロダクション」であり「広告代理店」であり・・・。そういう音楽制作・音楽ビジネスにかかわる様々なことを、ぜーんぶ自分独りでやってしまう人なのです。

もちろんこういうことを「全て得意だ」という人ばかりではないでしょう。これらの一部を「人に任せている」ボカロPさんだっています。だけど、こういう事柄をちゃんと自分で把握したうえで人に任せるのと、全く知識が無くてやみくもに人に任せる人とでは、その活躍内容に大きく差が出てしまうことは容易に想像できますよね。

今回、バーチャル・パフォーマーコース「ボカロ専攻」に興味をもっていただいた方には是非、前述したボカロPさんの様々な側面を勉強していただき、アーティストとしての能力を磨くことはもちろん、地に足の着いた活動を継続的に行うための「武器」を身に着けていただきたいと思います。

申し遅れましたが、私はボカロPさんたちを、ボカロ文化が始まった頃からお手伝いをしてきた、日本ネットクリエイター協会(JNCA)の仁平(にへい)と申します。これまでたくさんのボカロPさんの作品をゲームやカラオケ、メジャーレーベルのCDなどに入れたり、テレビCMなどに提供する仕事や、ボカロPさんの抱える様々な問題や契約トラブルに対する対応、税務サポートなどをしてきました。
そのような仕事を通じて、ボカロPさんのような個人クリエイターさんが作った楽曲の管理や市場展開の方法について、これまでに蓄えてきた「教科書には載っていない実践的なノウハウ」を機会があれば是非皆さんにもお伝えできればと考えています。
ご参考までに私が執筆した著作を紹介しますが、これらの本にも、こうした「教科書には出てこない実践的なノウハウ」や、実際の「ボカロPさんの活動や心構え」などが書かれています。

人生はチャレンジです!

ボカロPを目指す皆さんは「まず曲を作ってみる」というスタンスが大事だと思いますよ。ニコニコ動画では「ボカロPデビュー」を目指す方向けの公式イベントとして「ボカコレ」や、JNCAが主催している「ボカロ入門」などの企画も開催されていますので、まずはこのようなイベントを目指してチャレンジしてみませんか? 皆さんが踏み出す第一歩を、JNCAは心から応援しています。

AI作曲と音楽NFTの
これから

斎藤 喜寛

起業家として音楽テクノロジーの会社を経営。
作曲家 ギタリスト 機械学習リサーチャー
1980年代後期より大手レコード会社(avex trax等)で音楽制作。J-POP3人組でオリコンチャート入り、サウンドトラックや環境音楽のチャートで1位獲得。
KIOXIA、Amazon Japan、三菱地所、パナソニックなどの音楽制作担当。
AI作曲本「Magentaで開発 AI作曲」著者。

Magentaで開発 AI作曲

私は、AIやブロックチェーンといった最新テクノロジーを使って新しい音楽サービスを作る会社を経営しています。
作曲家、ギタリストとしては、J-POPや、企業のCM、イベントの音楽を作っていますが、そこでもAIなどのテクノロジーで、これまでにない音楽を創ろうと色々なチャレンジをしてきました。

例えばKIOXIAという企業のCM音楽ではAIで作ったフレーズを人間のギター演奏でロックミュージックにするという新しい取り組みも行いました。
それらの音楽AI活動の集大成として自分でプログラミングして音楽AIを作る、Magentaで開発 AI作曲という本も出版しています。
現在はブロックチェーンを活用したNFTというテクノロジーを活用した新しい音楽サービスを展開しています。
さて、昨今、テクノロジーで新しい音楽を創る活動をしているアーティスト、そして入学を希望している皆さんにとっても、とても大きな可能性を持つ新しい世界が注目されています。

それは、メタバースです。

メタバースとは何でしょうか?色々な説明の仕方があるとは思いますが、簡単に言えば、インターネットやコンピュータ上、あるいは現実世界とリンクした仮想空間で、アバターを使って色々な事ができるサービスや、仕組みの事を指します。
仮想空間で、アバターを使って色々な事ができる?と聞いて、もう皆さん気がつかれたでしょうか?メタバースは、アバター=バーチャルパフォーマーとして、音楽活動ができる新しい活躍の場でもあるのです。
そしてこの新しい音楽の活動の場であるメタバースが、AI作曲と、音楽NFTのこれからを語る上で欠かせないものとなってきます。

まずはAIです。
AIで音楽を作る、という事だけならすでに現実の世界でも実用化が進んでいます。作曲のアシスタント、特に初心者がAIの助けを借りながら作曲を覚える、などの使い方はとても有用だと思います。しかしメタバースでバーチャルパフォーマー+AIとなると、単なるAI作曲の役割を超え、その可能性は一気に広がります。

例えば、3Dのバーチャルアイドルをメタバースに作ります。
そしてそのアイドル独自の個性や音楽性を持ったAIを作り、自分で作曲するバーチャルAIアイドルを作るというアイデアはどうでしょうか。
さらにはそのバーチャルアイドルが少しづつ音楽を覚える過程をストーリー仕立てにし、ファンと一緒にメタバース上で育てる、などなど、バーチャルなのに、いやバーチャルだからこそ、まるで本当に存在しているかの様な、バーチャルアイドルを作る事ができるかもしれません。
つまりメタバースでは、AIが、単にAI作曲のプログラムを超え、アイドルそのものになるかもしれないのです。

まるで映画かアニメの様な世界の実現です。

次は音楽NFTについてです。NFTとはブロックチェーンというテクノロジーを使った、デジタルの証明書の様なものだと思ってください。メタバースはデジタルの世界なので、証明が必要な色々な商品や取引にこのNFTやブロックチェーンが活用されると考えられています。

NFTは音楽では何に使われるのでしょうか?
例えばこの証明機能を使って、世界でたった1枚の限定音楽NFTとして発売できたりします。ファンクラブ限定の音楽NFTや、そもそもファンクラブの会員証などでの活用も考えられるでしょう。バーチャルアイドルならトレーディングカードも良いですね。誰がどんなトレーディングカードを持っているのか、証明したり、交換したりもデジタルで簡単に行う事ができそうです。

またNFTはスマートコントラクトと言って、色々なデジタル取引の記録に使う事もできます。メタバースで音楽ライブを行う際のチケットなども期待できる活用方法です。皆さんのバーチャルパフォーマーがメタバース上でライブを行う際に、チケットはNFTで販売、というのももうすぐ実現できるかもしません。
という様にメタバースという仮想空間で、AIとNFTという最新テクノロジーが、これまでにない新しい音楽シーンを創る可能性が大いにあります。そしてその新しい音楽シーンを創るのは、これから生まれる新しいアーティスト、つまり皆さんになるのです。

この学校の素晴らしさは、どこよりも早く、新しい音楽の可能性を学べる事にあると考えています。バーチャルパフォーマーコースはまさにその代表例です。最先端の音楽を、しっかりとしたカリキュラムで、実績ある先生方から学べる、この様な学校は他にはないと思います。

ここまで解説してきた様な新しい音楽シーンを創りたい!そう願う皆さんにとって最高の環境です。音楽は、常にその時代の先駆けとなり、世界を導く大きな役割を持っていると私は信じています。そして次にその役割を担う音楽を創るアーティストが、入学される皆さんの中から誕生する事を心から楽しみにしています。

得意分野を活かしたコラボレーション

丸山 茂雄

1941年(昭和16年)生まれ。1966年、早稲田大学商学部卒業。広告会社を経て、CBS・ソニーレコード入社。78年EPIC/ソニー設立と同時に出向、83年より取締役。93年~2007年まで、ソニー・コンピュータエンタテインメント取締役として会長などを歴任。ゲーム機プレイステーションを一から成功に導く。

往生際

昔、エンターテイメントは、西洋ではシェイクスピアの作ったお芝居とか、モーツァルト、ベートーベン、ショパンが演奏するクラシックのライブを王様や貴族達だけが楽しんでいました。

日本では天皇や公家、幕府の偉い人だけが能を楽しんでいました。

18世紀ごろから西洋では一般の市民達もオペラというエンターテイメントを楽しむようになりました。それは劇場が大きくなり大人数のオーケストラが演奏するようになったからです。日本でも同じように芝居小屋などができ歌舞伎が上演され一般市民の人達も楽しむようになっていきました。

当時は技術が進歩していなかったから、エンターテイメントはオペラも歌舞伎もすべてが生のコンサートや、演劇、つまりライブでした。20世紀に入ると新しい技術が次々に発明され映画、レコード、テレビやゲーム機が発明されました。人々はその新しい技術の中にドラマ、音楽、ゲーム等、エンターテイメントを次々に詰め込んで広く世の中の人々に提供するようになりました。
そのようなわけで人々が今のようなライブではない録音や録画のエンターテイメントを楽しむことができるようになったのは、わずかこの100年ちょっとのことなのです。さらにインターネットの発明によりエンターテイメントは配信という技術で人々の手元に作品を届けることができるようになり多くの人を楽しませています。

技術はどんどん発展しましたが、皆さんが生まれた時から世の中にあるデジタルのガジェットは21世紀からのものです。新しいエンターテイメントは大部分がデジタルによって作られるようになり、デジタルガジェットによって楽しまれるようになりました。
デジタルは昔と違いクリエイティブのハードルを下げたと言えるかもしれません。
ただ一人の人間にできることには限界があります。音楽が得意な人もいれば、映像をつくるのが得意な人、キャラクターデザインが得意な人、ストーリーを考えるのが得意な人、ダンスが得意な人、衣装のデザインが得意な人等、そのようないろいろな才能を持っている人がいます。

これからのエンターテイナーやこの業界を目指す人たちは、今よりもっとデジタルを使い、音楽を作ったり映像を作ったりと、それぞれが得意分野を持ち寄り色々な要素をコラボした作品をつくる時代となるでしょう。
皆さんはこの学校に入って自分の得意な部分を伸ばし、先生や友達と一緒に何かを作るということに挑戦してみてください。

皆さんが学ぶこれからの時代のエンターテイメントはデジタルによってさらに大きく変化します。この学校で学び、その後世の中に出ようとしているあなた達はとても面白い時代を生きているのです。

頑張ってください!